SOAR(ソアー)は「Security Orchestration, Automation, and Response」の略で、セキュリティの協調、自動化、応答を指します。これは、企業がセキュリティ脅威に対処する方法を効率化し、自動化するための一連の技術を指します。このような技術の目的は、クラウドサービスやIT環境を直接守ることではなく、セキュリティチームがアラートの管理、インシデントの応答、日々のタスクの自動化など、セキュリティ作業をより迅速かつ効率的に行うことを可能にすることです。本記事では、そんなSOARについて詳しく解説します!はじめに近年、サイバーセキュリティの脅威はますます高度化し、複雑化してきています。その中で、人間が一つ一つのセキュリティイベントに対応するのは困難となってきました。これを解決するための新たな技術として登場したのがSOAR(Security Orchestration, Automation, and Response)です。この記事では、SOARとは何か、そしてSOARが現代のビジネス環境でどのように役立つのかを詳しく解説します。SOARとはSOARとは、セキュリティオペレーションとインシデント応答の効率化と自動化を目指す技術です。多様なセキュリティアラートを収集し、それらを分析し、適切な応答策を自動的にまたは半自動的に実装することを可能にします。SOARは、時間と労力を節約し、組織のセキュリティ体制を強化することが目的となります。エンタープライズにおけるセキュリティ課題現代のビジネス環境でのセキュリティ課題は、次のようなことが挙げられます。①リソースの不足まずはリソースの不足です。専門的なスキルを持つセキュリティのプロフェッショナルは限られています。たとえば、一部の企業では、情報セキュリティ専門家が十分に配置されず、ITスタッフがセキュリティ問題に対応しなければならない場合があります。いわゆる「情シス」が一手に担うことも少なくありません。この結果、効果的なセキュリティ対策の適用や管理が難しくなることがあります。②高度化する脅威サイバー攻撃は日々進化しています。ランサムウェアの攻撃は、ファイルを暗号化し、身代金を要求するだけでなく、データを盗み出し、公開を脅迫するといった二重の脅威(double extortion)に進化しています。これに対処するためには、最新の脅威情報を常に把握し、適切な対策を継続的に行う必要があります。③セキュリティツールの統合の困難多くの企業では、ファイアウォールや侵入検知システム、エンドポイントセキュリティツールなど、さまざまなセキュリティツールを使用しています。しかし、これらのツールが互いに情報を共有したり、一貫したセキュリティポリシーを適用するのは困難で、それぞれのツールが生成するアラートの管理も煩雑になります。④対応の遅延による被害の拡大セキュリティイベントが発生した際は迅速な対応が必要です。しかし、多数のアラートを人間が手動で処理するのは時間がかかります。例えば、深夜や週末にセキュリティイベントが発生した場合、インシデントレスポンスが遅れ、その間に攻撃者による被害が広がる可能性があります。このように、外部の脅威だけではなく、検知したセキュリティイベントへの対応や、導入しているツールの運用に関しても課題があります。SOARが提供する解決策以上のような課題について、SOARはどのように解決することができるのでしょうか。①自動化によるリソースの効率化SOARは、単純なセキュリティタスクの自動化を可能にし、セキュリティプロフェッショナルのリソースを効果的に活用します。例えば、不審なメールの調査、アラートの確認など、繰り返しの業務を自動化することで、スキルの高いプロフェッショナルがより高度な課題に集中できます。②脅威インテリジェンスとの連携SOARは、リアルタイムの脅威インテリジェンスと連携し、最新の攻撃手法に対する防御を可能にします。例えば、新たなランサムウェアの情報が発せられると、SOARはその情報を自動的に取り入れ、対応する防御策を自動的に実装できます。③各ソリューションとの連携と統合SOARは、さまざまなセキュリティツールと連携し、それらを一元的に統合します。これにより、一元的な視点からセキュリティを管理し、各ツールからのアラートを効率的に処理することができます。④自動化と連携による対応時間の最小化SOARは、自動化されたレスポンス機能を提供します。これにより、脅威が検出された瞬間に自動的に対策が実行されます。例えば、フィッシングメールのクリックなど、不審な通信が検出された際、自動的に該当のIPアドレスをブロックしたり、不審なメールを隔離したりすることが可能になります。これにより、人間が対応するまでの時間差を最小限にし、被害を防ぐことができます。まとめSOARは、多種多様なセキュリティツールからの情報を統合し、その情報に基づいた応答を自動化することで、セキュリティオペレーションの効率化とスピードアップを図るものです。SOARは万能なセキュリティソリューションではありませんが、既存のセキュリティツールやプロセスを強化し、スタッフの作業負荷を軽減するための強力なツールとなるでしょう!