
2025年09月30日
2025年8月4日、スカイゲートテクノロジズ株式会社主催による「#2 DEFENSE TECH DAY」が開催されました。
会場には、防衛省・自衛隊の関係者、AI・宇宙・量子・ドローンといった先端分野のスタートアップ、国内外の投資家や研究者が集結。その数は総勢250名にのぼり、官民・産学・国内外の立場を超えて、防衛領域に関わる幅広い層が一堂に会しました。

安全保障領域における最新技術の実用化や、民間発イノベーションを防衛現場にどう橋渡しするか、そして海外の成功事例から何を学び、日本にどう適用するか。多角的な議論が展開されました。官民・国内外の視点が交わることで見えてきた「防衛テックの現在地と未来像」を、本レポートでお届けします。
開会に先立ち、スカイゲートテクノロジズ 代表の粟津が、本イベントの開催背景や目的、そして防衛テック業界が向かうべき方向について語りました。

「DEFENSE TECH DAY」は、防衛とテクノロジーの歩みをテーマにしたイベントで、前身となるイベントを含めると今回で3回目となります。昨年10月の初開催から、防衛省、スタートアップ、投資家など多様な方に参加いただき、普段は話しにくいテーマや生まれにくい交流を実現する場を目指しています。単なるマーケティングイベントではなく、業界全体に奥行きを持たせる取り組みにしたいと思っています。
私たちのビジョンの一つは「日本の誠実な防衛テックを目指す」こと。グローバル化が進む中で、日本には日本なりの進むべき方向があると信じています。防衛予算の増加を社会課題の解決につなげるために、業界全体でエコシステムをどう構築していくかが重要です。AIやソフトウェアの進化も、この変化を後押しします。
今回のテーマは「防衛テックエコシステムの構築」です。そして、本イベントは3つの視点で構成しています。
一つ目は政府の視点。省庁の皆様がどのようなことを考えておられるのか。これはスタートアップの皆様が理解を深める貴重な機会になると思います。
二つ目は、AIを中心としたテクノロジーがこの世界にどのような影響を与えていくのかという視点。皆さんの今後の会話に必要なインプットになると考えています。
そして三つ目は、グローバルの視点。今回はフィンランドからゲストをお迎えしており、防衛を通じて世界がより良くなるためには何を学ぶべきか、という観点でお話しいただきます。
カルチャー・テクノロジー・資金が融合する場を日本にも実現したいと考えています。今日はその一端を皆さんと共有できればと思っています。

また、元防衛副大臣 衆議院議員 井野氏からは「私たち政治の側としても、新しい技術や企業が防衛産業に参入し、活力ある産業構造を作っていけるよう、しっかりと支援してまいります」といった挨拶をいただきました。

経済産業省 製造産業局 航空機武器産業課 課長補佐 間山氏より、防衛テック分野におけるスタートアップ活用の現状と課題、そして今後の展望についてお話しがありました。

従来は軍事技術から民生技術が派生するケースが多かったのですが、今は逆の流れが増えています。炭素繊維複合材やドローンなど、民間のニーズから生まれた技術が防衛にも活用されています。
世界的に見ると、民間の研究開発費は防衛関連を大きく上回っています。AmazonやGoogleがトップで、防衛関連企業は順位が低い状況です。日本の防衛企業は売上の大半が民生分野で、防衛事業への大規模投資はなかなか難しいのが実情です。
防衛市場は今後、世界的に拡大していく見込みです。スタートアップは経済成長のドライバーであり、防衛分野も大きな成長の機会になります。安全保障も社会課題の一つと捉えることができ、経済成長と課題解決の両面で意義があります。
2022年に政府が「スタートアップ創出元年」を宣言し、「スタートアップ育成5か年計画」を策定しました。防衛省による調達は、成長段階のスタートアップにとって売上を作るためのひとつの突破口になると考えています。
防衛産業は競争的な構造に移行してきています。新しい技術と、長く使われてきた基盤技術を組み合わせることが、生き残りの鍵です。スタートアップの皆さんには、ぜひ既存の防衛企業と連携して、防衛省にとっての大きな付加価値を生み出していただきたいと思っています。
コロナ禍で、ファイザーがドイツのスタートアップ・ビオンテックと共同でメッセンジャーRNAワクチンを開発した事例があります。こうした連携が、社会課題の解決や付加価値の創出に大きな力を発揮します。
今回のような場を通じて、防衛省・既存企業・スタートアップが対話し、オープンイノベーションが進むことを強く期待しています。
陸上自衛隊教育訓練研究本部 研究部長の小山陸将補からは、変化の激しい安全保障環境において、新しい技術を戦いに迅速に適応させる「適応化競争」の重要性について解説が行われました。

私が所属している研究部は、将来の戦い方やそれに必要な装備品等の研究を行っています。その研究成果の一端と、スタートアップ企業との連携の取り組みをご紹介します。
将来、戦って勝つためには、さまざまな取り組みを進める必要があります。今日はその中から「意思決定・行動のループ」と「適応化のループ」という二つのループを高速化させることの重要性についてご紹介します。
まず「意思決定・行動のループ」ですが、相手よりも早く判断・意思決定・行動することで、相手を常に受け身にさせることができます。ウクライナ戦争では、AIを活用した「GIS Arta」というシステムで、発見から攻撃までの判断を数分に短縮し、ロシア軍に対応のいとまを与えませんでした。
もう一つの「適応化のループ」は、新しい技術を素早く戦いに取り入れ、更新し続ける取り組みです。ウクライナ戦争では、今日の最先端技術が翌日には陳腐化するほど変化が激しく、「1日限りのアイデア戦争」と呼ばれる状況です。
ドローンの進化は象徴的です。大型軍用機から始まり、小型民生機の改造、FPVドローン、ジャミング対策の有線操作が可能な光ファイバードローンなど、次々に形を変えてきました。現在は政府とスタートアップが連携する「Brave1 initiative」で、4,000種類以上の無人機が投入されています。
こうした背景を踏まえ、陸上自衛隊では「GTA協議会」という枠組みで、陸上幕僚監部・教育訓練研究本部・防衛装備庁が連携し、企業提案をもとに新技術の早期実装化を進めています。装備品の研究開発における「構想→研究開発→運用」という各段階において、陸上幕僚監部、教育訓練研究本部、防衛装備庁、企業等のそれぞれの役割を有機的に連携させ、陸上自衛隊の研究開発・改善努力の一体化を図ることは、まさに適応化のループの実践例だと言えます。
新しい技術を迅速に実装し、更新し続けることは今後の戦いにおける重要テーマです。そのためにもスタートアップとの連携は欠かせず、今後さらに加速させていきたいと考えています。
防衛装備庁 防衛イノベーション科学技術研究所 所長 片山氏からは、スタートアップ連携促進の具体的な取り組みや支援施策が紹介されました。

当研究所の役割は、防衛省の内外と連携して、我が国の防衛に変革をもたらす、「防衛イノベーション」を起こすことにあります。実証を通じて「安全保障のための革新的な技術」を追求し、将来に向けた機能・能力を創出します。装備体系にとらわれず、新たな「機能」や「能力」の創出に注目する点が従来の研究所と比べて異なる特徴となります。
防衛イノベーションを起こすには、3つの方向性があると考えております。第一に「既存の研究開発の枠組み・思考からの脱却」です。新しい発想や迅速な対応を実現するには旧来の制度や文化を乗り越える必要があり、スタートアップが有するスピード感との間に生じるギャップをいかに克服するかも重要になります。
第二に「イノベーションを起こす仕組みの構築」です。イベント等を通じて防衛への理解と関心を高めて産学官連携を深め、必要なら新しい制度を検討し、優秀な外部有識者の方々のお力をお借りすることで、科学技術の向上による防衛力、国力全体の向上を目指します。
最後に「安全保障研究開発エコシステムの構築」が挙げられます。民生技術を活用した新たな装備品開発に力を入れ、その成果を防衛技術の基盤強化へと還元する視点を重視する必要があります。
防衛イノベーションの創出に向け、当研究所では3つの取組みを推進しています。
「安全保障技術研究推進制度」では、基礎的分野における研究者を幅広く募り、簡単な申請手続きにより資金を提供しています。今年度からは補助金の活用が可能となり、特に大学からの応募件数が増加しました。
「革新型ブレークスルー研究」では、外部からプログラムマネージャを招き、挑戦的で革新的な研究に取り組んでもらっています。例えば、熱可塑性固体推進薬を用いて誘導武器の大幅な製造期間の短縮を実現する研究、素粒子を用いて原子力潜水艦の探知を行う研究、極超音速機等への応用が期待される強靭な超高温セラミックスの研究などが進行中です。
「実証型ブレークスルー研究」は成熟度の高い技術を迅速に装備品に実装することを目的としています。3年以内の部隊導入を目指し、不整地をパッシブセンサのみで偵察できる無人車両、小型水上ドローンを用いた海洋監視制御システム、生成AIによる偽情報検出などの研究を進めております。
本日のようなイベントは、民間企業やスタートアップと継続的に議論し、異なる文化や価値観を融合させる貴重な機会です。こうした共創がオープンイノベーションにつながります。今後は我々もイベントの開催を企画しておりますので、是非参加頂ければと思います。
続いて、株式会社Preferred Networks・Sakana AI株式会社・さくらインターネット株式会社の3社が、AI技術の安全保障領域での活用について、技術面・運用面の可能性と課題を多角的に議論しました。
登壇したのは、Preferred Networks ビジネス開発マネージャー 松下氏、Sakana AI 事業開発部長 谷口氏、さくらインターネット AI事業推進室 室長 角氏、そしてスカイゲートテクノロジズの柿原です。

松下(Preferred Networks):2014年創業のAI企業で、チップ、計算基盤、生成AI基盤モデル、ソリューション・製品まで、AI技術のバリューチェーンを垂直統合し、ソフトウェアとハードウェアを高度に融合することで、競争力の高い技術の開発および産業応用を進めています。
国産生成AIモデル「PLaMo™」は日本語性能でグローバルモデルに劣らない水準で、オンプレミス運用にも対応しています。ドローン制御や3Dモデル構築、大規模データ圧縮など、将来的にデュアルユースとして安全保障にも活用できる技術も多数あります。

谷口(Sakana AI):2023年創業のスタートアップで、「小さく効率的なモデル開発」と「AIエージェントによる業務自動化」の両方を行っています。
金融と防衛を「スケーラブルニッチ」と位置づけ、防衛分野では「日米グローバルイノベーションチャレンジ2025」で感染症シミュレーションと偽造画像検出技術を提案し、賞をいただきました。

角(さくらインターネット):1996年創業のインターネットインフラ企業で、データセンター運営からクラウド基盤まで自社開発しています。ガバメントクラウド暫定認定を国産事業者として初めて取得しました。
現在はAI計算資源に1,000億円規模の投資を行い、安全保障領域でも安心して使える国産インフラを提供しています。

柿原:これまでのセッションでは防衛省の政策や戦略的な視点が多かったですが、ここからは「民間企業から見てどう映るのか」という視点で進めていきます。まずは現時点でのAI活用の可能性と難しさについて、お伺いできればと思います。
松下(Preferred Networks):AIの適用可能性は非常に幅広くて、国家防衛戦略で示された7つの機能の中でも、無人アセットの運用や地域動態の把握、情報処理といった分野ではAIは必須だと思っています。
ただ、「実際にどう適用するのか」という議論はこれから。有機的な官民学連携が不可欠ですし、民間も受け身ではなく共創の姿勢が大事だと感じています。
谷口(Sakana AI):可能性が高いのは「情報戦・認知戦」と「無人アセット」への適用です。
課題は3つあります。1つ目はニーズが見えづらいこと。防衛・安全保障領域のニーズは外からは把握しづらいです。2つ目はデータへのアクセスが難しいこと。機密性が高く、パブリックデータや合成データでの検証が必要になります。そして3つ目は、プロジェクトの進め方のギャップです。民間のPoC型と、防衛現場の事前仕様定義型との違いが大きいです。このギャップを理解して、乗り越える工夫をしていきたいと思っています。
角(さくらインターネット):法制度や価値観の違いが大きな課題です。海外製AIモデルへの依存は安全保障上のリスクになり得ます。 国内完結の国産AI基盤を提供して、安心して使える環境を整えることが重要だと思っています。
柿原:今後の展望についてお聞かせください。
谷口(Sakana AI):防衛領域における国産AIの重要性は今後ますます高まると思います。「DeepSeekショック(※)」で小型・軽量・オープンモデルの可能性が広がりましたが、海外依存のリスクも改めて見えました。日本発の強いAIを作って、金融と防衛の両分野で安全な貢献をしていきたいです。
※中国のAIスタートアップ企業であるDeepSeekが、低コストで高性能な生成AIモデルを発表したことで、世界の株式市場、特にAI関連株が大きく変動した現象。
角(さくらインターネット):安心・安全な国産AI基盤の提供が最優先です。インプットデータの信頼性も含めて、インフラ側からしっかり支えていきたいと思っています。安全保障領域での本格活用も進めていきます。
松下(Preferred Networks):ハードとソフトの融合は避けられません。シミュレーションと実機のギャップを埋めるには、両方を一体で設計する必要があります。今後は「AIをどう適用するか」から「どう運用するか」に移っていきますし、人間とAIが共存する前提で業務設計を見直す時期に来ていると感じています。
柿原:国産AI基盤の重要性が繰り返し出てきました。それぞれの立場で国産技術を支えている姿勢はとても心強いです。AIは既存産業と対立するものではなく、共存・協力して価値を作っていくものです。今日の知見と技術力が、安全保障領域に新しい風を吹き込むことを期待しています。
本セッションでは、ICEYE・IQM・Kuva Spaceの3社が、フィンランドのスタートアップ支援環境やエコシステムの特徴、防衛・安全保障分野における事例について議論しました。
登壇したのは、フィンランド大使館商務部 上席商務官 渥美氏、ICEYE セールス&ビジネスコンサルタント 岩成氏、IQM Co-founder&CGAO Dr. Juha Vartiainen、Kuva Space CTO&Co-founder Dr. Tuomas Tikka、そしてスカイゲートテクノロジズの先名です。

先名:まずはフィンランド大使館の渥美さまから現状と全体的なエコシステムをご紹介いただければと思います。
渥美:フィンランドは「平和で幸せな国」として知られてきましたが、2022年のウクライナ侵攻以降、防衛意識が急速に高まりました。それに伴い、防衛分野でのスタートアップやイノベーションが活発になっています。
特徴は、大学・研究機関発のスタートアップが多いこと、政府と民間の連携が非常に密であること、小規模市場を前提に最初からグローバル展開を見据えることです。
現在、防衛・デュアルユース分野に関わる企業は約300社あり、そのうち約4割がスタートアップや中小企業。日本とも小型衛星や装甲車製造などで共同プロジェクトが進んでいます。

先名:続いて、各社のご紹介をお願いいたします。
岩成(ICEYE):ICEYEはフィンランド発のSAR衛星企業で、これまでに54機を打ち上げ、目標は1,000機体制です。日本では損保会社と組み、災害直後の迅速な保険金支払いに衛星データを活用しています。IHIとの協業で国内製造も計画中です。

Dr. Tuomas Tikka(Kuva Space):ハイパースペクトル衛星を使った監視・偵察サービスを提供しています。目に見えない波長から物質を特定でき、AISを切ったステルス船や闇船も追跡可能です。
衛星は自社開発で、これまでに5機をすべて成功裏に打ち上げました。AIによるデータ解析も社内で構築しており、カモフラージュ検知、戦場モニタリング、土地利用の変化など、防衛で幅広い用途があります。

Dr. Juha Vartiainen(IQM):ヨーロッパ最大級の量子コンピューターメーカーで、これまでに30台以上を納入し、従業員300人のうち120人以上がPhD保持者です。
量子コンピューターはサイバーセキュリティやナビゲーション、センシングなど防衛にも有望です。フィンランド政府が量子コンピューター導入を公募した際に受注し、迅速・効率的に納入しました。

先名:1つ目の質問です。皆さんのようにユニークなスタートを切り、事業を成長させてきた背景には、どのような理由や環境があったのかを伺いたいです。
岩成(ICEYE):技術を開発しても使い道が見つからない、あるいは資金が足りない——スタートアップにはいくつもの「谷」があります。 弊社の社長ラファエルは、資金繰りに非常に苦労していました。ある時、投資家が集まるパーティーがあり、その帰り道で投資家の車に無理やり同乗し、その車内でプレゼンを行って出資を受けた、というエピソードもあります。
また、政府からの投資もありますが、やはり最初は非常に厳しい局面が続きます。共同開発をした際には、お金がなく、自分の銀行口座から現金を引き出して仲間に配り、一緒に食事に行ったこともありました。
こうした苦しい時期をどう乗り越えるか——そこに投資家や支援者、メンターの存在が大きく関わります。そして最後まで諦めないことが、何より重要だと考えています。
Dr. Tuomas Tikka(Kuva Space):Kuva Spaceの成功を支えた要因はいくつもあります。最初は大学での研究から始まり、大学からの支援を受けて、フィンランド初の衛星を製造する資金を得られたことが大きかったです。
その後、他大学やフィンランド技術研究センター(VTT)、創業投資家であるReaktorというデジタルサービス企業と連携し、高度な技術を持つ企業に成長できました。
また、フィンランド国内で宇宙技術開発が国家的な重点分野とされてきたことも、資金調達の面で追い風となりました。現在では、防衛分野にも同様の動きが見られ、今後の成長に繋がると期待しています。
Dr. Juha Vartiainen(IQM):大学発の新しい技術を迅速に実用化するには、スタートアップが最も速く、安価で、効果的な手段です。成功には「スタートアップ文化」の醸成が不可欠であり、創業者や連続起業家、資金調達の仕組みが必要です。
特に防衛関連技術においては、「まず研究・開発が許可される」ことが前提になります。現在ヨーロッパでも、大学でデュアルユース(軍民両用)技術の研究が可能か、資金提供できるか、といったポリシーの明確化が求められています。こうした環境整備が成功の第一歩だと考えます。
先名:次の質問です。こうした環境の中で、日本でも同様にスタートアップによる重要技術の開発、特に防衛省向けの開発を行うためにはどうすればよいか、また、フィンランドでは文化的なギャップがないのか、それを埋めるための取り組みについてもお聞かせください。
岩成(ICEYE):日本では防衛省との距離感が大きな課題です。例えばNDAを結んでから情報を出しましょう、という流れ自体は難しくありませんが、日本企業の場合は非常に大ごとになってしまい、社内で公務員にまで確認しなければならないという感覚があります。
他の省庁でも同じ傾向があります。自由に話せる場や関係性を築く仕組みがあれば、状況は改善できると思います。
Dr. Juha Vartiainen(IQM):フィンランドでは、4年前に政府が量子コンピューター開発への投資を決定し、スタートアップにも入札を開放しました。これは総額3,000万ユーロ規模の国家プロジェクトで、小規模な企業にとっても非常に大きな機会となりました。結果として政府にとっても費用対効果が高く、迅速な成果を得られました。
重要なのは、スタートアップが参加できる仕組みを作ることです。これが多くの欧州諸国の参考モデルになっています。
Dr. Tuomas Tikka(Kuva Space):政府や防衛関連組織との対話の難しさは、日本だけでなくフィンランドや他国でも共通の課題です。その理由の一つは、リソースや予算の不足、そして優先順位付けの難しさです。
解決策としては、政府が技術を評価・試験できるプログラムを整備することです。特に、まだ完全に実用化されていない技術を持つ企業にとっては重要です。
弊社も衛星データを提供できるようになってからは、政府との関係構築が進みました。また、最近ではフィンランドと日本の政府間でも活発な議論が行われており、弊社も日本の関係機関と直接やり取りできる機会が増えています。
先名:「諦めないこと」「アカデミアとの連携」「話せる空間の整備」がスタートアップにとって重要だと感じました。
続いて、財務省国際局調査課 投資企画審査室 課長補佐 玉田氏より、安全保障上の観点からの対内直接投資等審査制度について説明が行われました。

さらにジャフコグループ株式会社 投資部 プリンシパル 白川氏より、投資家の立場から見た防衛産業の魅力と課題、投資を呼び込むためのポイントについてお話しがありました。

ジャフコグループ株式会社は、50年にわたり投資活動を行っており、上場している、いわゆる“ちゃんとした投資会社”です。運用総額は1.2兆円、累計投資先は約3,000社、そのうち上場企業は1,000社を超えます。
現在、防衛省とも取引のある投資先があり、そのうち2社をご紹介します。
1社目は「Synspective」。小型SAR衛星を開発し、防衛領域でデータが活用されています。弊社が関わったのは設立2か月後、ほぼ何もない段階で社長の夢だけがあった時に10億円を出資。その後も何度も追加出資し、総額100億円以上になりました。
2社目は「Astroscale」。宇宙ゴミ回収に挑む会社で、こちらも何もない段階で出資し、結果的に400億円以上を集めて事業を進め、防衛領域でも活用されました。こうした事例を、防衛テック分野でもこれから生み出していきたいと思っています。
戦争にテクノロジーが使われるのは当たり前になってきています。ウクライナ戦争もその証拠です。
アメリカでは防衛テック系スタートアップが台頭し、Palantir Technologiesのように、防衛力の中核となる企業も出ています。
米国のVC市場は毎年5兆円規模で投資が行われ、800社以上が新たに生まれています。一方、日本はスタートアップ全体で約8,000億円、防衛テックに限れば100億円もありません。
このままでは海外との差は広がるばかりで、新たな防衛テック企業が出てこなければ海外製品に頼り続けるしかないという危機感があります。
今年5月、スカイゲートテクノロジズさまが国内スタートアップとして初めて10億円の調達に成功しました。弊社も出資しています。こうした事例を成功に導けるかどうかが、今後の防衛産業の未来を左右すると思っています。
防衛産業の発展には、VCの出資だけでは不十分です。VCはお金は出せますが、「作られた技術を使う」「買う」「売上を立てる」ことはできません。
収益がなければ企業は続かず、新たな投資も生まれません。だからこそ政府によるソリューションの活用が不可欠です。スタートアップの技術を政府が使うことが、日本の防衛力を高める第一歩だと思っています。
ジャフコグループは「起業家の一番近くにジャフコを」というスローガンで50年間活動してきました。防衛産業の発展でも、起業家やVCだけでなく、政府や本日ご参加の皆さまとも「共同創業者」のような関係で一緒に取り組んでいきたいです。
最後に、粟津から今後の展望について語られました。
今日は大きく3つの視点からお話しました。1つ目は、政府の立場からの視点。防衛省や各省庁がどんなメッセージを出しているのか。2つ目は、先端技術、特にAIと安全保障の関係。そして3つ目は、フィンランドの成功例です。中小企業300社以上が関わってサプライチェーンを形成し、テクノロジーを推進してきた事例ですね。
ただ、この文化的なギャップを埋めるのは簡単じゃない。日本の課題はまさにそこにあって、多くの人が「重要性はわかっている」のに埋められない。これが一番の問題だと思っています。
私たちは、「民間イニシアティブ」と「防衛プラットフォーム」、この二つの構想を引き続き進めています。「防衛プラットフォーム」は、社会のカルチャーギャップを壊していく構造を目指していて、待っているだけじゃなく、自分たちで動くことが大事です。今日のイベントもその一環です。
皆さんそれぞれ、狙いや想いがあると思います。「防衛産業で売上を上げたい」とか「トレンドを押さえたい」とか。今はそれぞれが「点」なんですけど、それを繋いで強い「イニシアティブ」にしていく。そうすれば、「日本の誠実なテック」に近づけるはずです。
防衛分野には、イノベーションのジレンマがあります。先端技術を現場に取り込むには、技術の蓋然性やシステムの連」などの障壁がありますよね。このジレンマを超えられるのは、私たち一人ひとりの意思です。意思ある人が超えていくことで、本当の意味での「テック」が生まれる。その先には、ギャップのない開かれたパラダイムがあると信じています。
私たちはこれを「OpenJADC2」と呼んでいます。いろんなケイパビリティを繋げ、日本の防衛力に貢献できる体制を作るものです。「JADC2」という防衛用語があるように、領域も業界も横断して連携することが必要です。
そのために、新しいプラットフォーム「DAIJA」を作ります。これは単なるオープンイノベーションハブではなくて、「意思ある人が集まって、一気に話が進む」場です。民間側が持つ技術と防衛が抱える課題を可視化して、すぐにプロジェクトを立ち上げられるようにします。
将来的には、この仕組みを防衛プラットフォームに繋げ、さらに最終形として「ALAYASKI」の開発も視野に入れています。安心・安全な自国技術によって経済成長にも繋がる、本当にセキュアな構造を作ることを目指しています。
オールジャパンで防衛に対応できる体制ができれば、日本は健全に世界と向き合い、地域の安定や経済発展にも貢献できるはずです。その第一歩が今日のイベント。まさに”ステップ0”だと思っています。

今回の「#2 DEFENSE TECH DAY」では、防衛省・自衛隊、スタートアップ、投資家、研究者が一堂に会し、現場課題と技術シーズを持ち寄って議論が交わされました。国内外の知見や経験が交差することで、新たな連携やビジネスの芽が見え始めています。
また、来場者アンケートでは、参加者の関心事や印象に残ったテーマが浮き彫りになりました。特に多く挙げられていたのは以下の3点です。
1.AI技術の実装
「可能性と難しさ」「人とAIの協業」といったキーワードが目立ち、単なるトレンドではなく、実用化フェーズに向けた課題への意識が高まっていました。
2.スタートアップを中心としたエコシステムの構築
「官民連携」や「もっとオープンなコミュニケーションを」といった意見から、防衛省や政府とのより具体的な協力体制を求める声が多く寄せられました。
3.防衛省・政府との具体的な連携
「フィンランドの事例を参考にしたい」「デュアルユースの必要性」といった言及が多く、防衛分野を持続可能なビジネスとして確立したいという意識がうかがえました。
こうした感想からは、本イベントが防衛テックの解像度を高める機会であったと同時に、次の実践に向けた課題意識を共有する場となったことがわかります。
粟津が語ったように、この日が「日本の誠実な防衛テック」への第一歩であり、“ステップ0”です。カルチャー、テクノロジー、資金が融合する場を継続的に生み出すことで、防衛領域における技術活用はさらに加速し、オールジャパンで世界と向き合える未来へとつながっていくでしょう。